春の養生 〜生活のメリハリと気血の巡り〜

4月になりました。

新型コロナウイルスに感染して亡くなられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、罹患された方々の早い回復をお祈りしております。

社会は大変な状況になっていますが、慌てすぎず、やれる事をやっていきたいと思っています。

 

今回はカラダを健やかに保つための、春の養生について書きたいと思います。

はじめに書いてしまうと、kibacoが考える春の養生のテーマは…「万物が芽吹く変化の季節、生活のメリハリを大切に」です。

実際どんなことなのか、をお伝えするために、まず東洋医学における「春」と、春に関わるキーワードについて簡単に説明しますね。

春は「はじまり・芽吹き」の季節です。日照時間も徐々に長くなり、陽の気が盛んになってきます。

陽の気とは、温かさを持つ動的なエネルギーのことで、冬の間に盛んになっていた寒さ・静的なエネルギー(=陰の気)の対極にあるものです。この陽の気を受けて、自然界にある様々なものが活動を始めます。

また、春は風の邪気である風邪(ふうじゃ)が盛んになると言われています。肌が風に晒されると、風邪(ふうじゃ)がカラダに入り込み風邪(かぜ)をひくことになります。風邪(ふうじゃ)が他の邪気を仲立ちして、寒さ・乾燥など、他の邪気とセットでカラダへの影響が出ることも。それぞれの季節に注意すべきポイントを、昔の中国では邪気に例えたわけですね。

そして、こんどは春とカラダの関係ですが、東洋医学では、いわゆる五臓六腑の「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」を陰陽五行の法則に当てはめて、それぞれの季節に割り振っています。その結果「春は肝(かん)が活発にはたらく季節」ということになっています。同時に、春は肝に関わるトラブルが色々と出やすい季節でもあります。

東洋医学でいう「肝」は肝臓そのものとは少し違います。現代の医学で言う肝臓は、栄養を代謝したり、有害な物質を解毒したり、胆汁をつくったりする臓器ですが、東洋医学の「肝」は、簡単に言うと「カラダに気を巡らせる・血を貯めて全身の血流量を調節する」という役割を持ちます。つまり、気血の循環に関わるシステムを「肝」と呼んでいるとも言えます。また肝は感情の動きや目にもつながると言われ、肝の不調がイライラや目の不調として表れます。

肝は「春の季節のように、のびのびとした状態を好む」と言われます。ストレスがかかると不調が出る、というのはこういう特徴があるからですね。気血の巡りに関わる肝に不調が出ると、下のような症状が出ると言われています。

◯感情のコントロールがうまくいかなくなってイライラしたり、

◯気の巡りがとどこおって肩こりがひどくなったり、不眠になったり、

◯気がカラダの上の方に上がりすぎてしまい頭痛になったり、

◯血の循環が悪くなることで月経不順になったり…

さらに、肝の不調は、五臓の一つである「脾(ひ)=消化吸収を司るシステム」にも影響します。ストレスが強くてイライラすると胃腸の調子が悪くなる方がいるのは、この仕組みのためだと言われています。

もともと、春は職場の異動や、家族の学校への入学、卒業などいつもと違うことがあったり、緊張状態が続いたりすることが多い季節なのに加え、今回のコロナウイルスの騒動で疲れてしまっている方も少なくないと思います。精神的な負荷は肝の不調を招きやすく、上で書いたような症状が出やすい時期ですね。

 

さて、前置きが長くなりましたが…

春の養生「万物が芽吹く変化の季節、生活のメリハリを大切に」とは、季節の邪気に注意しながら、肝を元気に保つためにオン・オフを意識し、気血の巡りをスムーズにして気持ちを穏やかに過ごす、ということです。

実際、何に気をつけたらいいかというと、

◯ストレス解消

ストレスがはっきり分かる方も、普段意識していないけれど知らず知らずにストレスがたまっているかも知れない方も、自分に合う方法でストレスを発散して気持ちのバランスを取りましょう。

◯早起きと軽い運動

朝起きたら、朝の気をカラダに取り込み、軽い運動で血の循環を促進して、自律神経の切り替え(オン・オフ)にメリハリをつけましょう。

◯油断せずカラダを守る

風邪(ふうじゃ)をカラダに入れないよう肌を風にさらさず、風邪気味な気がしたら、首から肩甲骨の間をあたためて邪気をカラダから追い出しましょう。

◯カラダを冷やさない

暖かくなってきたとはいえ気温の低い日もあるので、寒さに注意しましょう。

 

古代中国の東洋医学の書物、「霊枢(れいすう)」では、

「風雨寒熱、虚を得ざれば、邪独り人を傷めること能わず」=気がしっかりと巡り、カラダが弱っていなければ、外界の状態に左右されて体調が悪くなることはない、と述べています。

同じく古代中国の書物、「素問(そもん)」では、春の過ごし方について「遅めに寝ても良いが、朝は早めに起きて散歩するのが良い」、「髪は縛るのはやめて、全体にゆったりと自由にするのが良い」という内容が書かれています。

言われてみれば当然のこととも言えますが、日頃の養生が丈夫なカラダをつくり、季節に応じた過ごし方をすることで外邪の侵入を防ぎ、健やかな日々が送れると古代の賢人たちも気付いていたのです。

忙しく頑張る毎日の生活のなかで、皆さまが頭の片隅に「養生」という考え方を置いて過ごしてくださったらとても嬉しいです。

(Twitter https://twitter.com/kibaco1 では葉山の毎日の天気に応じた養生を発信していますので、是非ご覧ください。)

もちろん、季節の影響を受けつつも、人の気持ちや体質・症状は千差万別ですから、kibacoでは、季節を念頭に置きながらも「春だから肝!」と決めつけず、それぞれのお客様の状態を見極めた上でのセッションと漢方茶のブレンドを提供したいと思っています。

kibacoは、気血水を巡らせる施術と漢方茶で、皆さまの健やかな毎日をサポートします。